もうひとつのシートンの顔!

まだ日盛りは蝉時雨の夏日ですが最近の朝夕は暑さもしのぎやすくなりま
した。夏もそろそろ終わりを告げて、なんとなく秋の気配も感じられ、涼風に
乗った虫の音を聞きながら夕食後にベッドに寝転び読書を楽しむ私です。
 
「野生のエルザ」の翻訳で著名な藤原英司先生から文庫版「シートン動物
記・愛犬ビンゴ」藤原英司・訳を恵贈されました。私は何十年も前に先生の
ご著書の装丁イラスト等させていただき、その後はご無沙汰しているのに
藤原先生にまだ忘れ去られていない光栄に、感謝しながら拝読しました。
 
アーネスト・T・シートンは有名な動物作家であるとともに、この本から卓越
した能力を示すシートンのもうひとつの顔を知る事となり大変に驚きました。
シートンが描いた素晴らしい動物挿絵がたくさん掲載されていて、シートンは
動物イラストレーターでもあり、温かで洞察に満ちた動物表現に感激です!
 
シートンの絵はリアルでありながら、時にコミカルで動物の表情やポーズに
動物好きな私はいっそう深く魅了されてしまいました。あまり知られてはいま
せんがシートンは作家として名を成す前から、すでに21歳から動物画家と
して活躍していたそうで、観察し、行動する事から動物イラストレーターの
仕事は、やがて博物学者に、そして動物作家となっていったようです。
 
収録作品は表題作の「愛犬ビンゴ」と「銀ギツネの伝記」と「ヴェイ・アッチャー
—キルダー川のアライグマ」の三作です。
「愛犬ビンゴ」は犬とコヨーテと狼の物語で、人と犬との不思議なテレパシー
のような絆を感じさせ、犬が人に対する忠誠から飼い犬に重責を感じます。
 
「銀ギツネの伝記」は子キツネが成長し生涯を連れ添う一夫一婦制の相手
と家族を持ち生きる物語で、出産と育児の本能は何の教育もない野生の母
キツネでさえも人間の一番賢い母親と全く同じである事に感動した。猟犬と
の攻防も厳しく、生き物は他の生き物を食べて生きている自然界の仕組と
愛と憎しみが共生する矛盾に今更ながら何にも言えず言葉を失う私です。
 
「ヴェイ・アッチャー」はいたずらもののアライグマの物語で、アライグマの家
族から人間の家族にペットとして加わったが、いたずらのあまり追放されて
大木の洞穴で難を逃れ、再び野生のアライグマの群れに戻る物語です。
テレビアニメの世界名作劇場アライグマ「ラスカル」を思い出しましたが、こ
のアニメの影響で、本来日本にはいない北米のアライグマがペットとして持
ち込まれ、飼えなくなったアライグマが山などに捨てられて野生化し、農作
物への被害等で問題となり各自治体で駆除活動が行われているそうです。
 
農地は自然ではなく、人間が生産活動のために利用している土地なので
そこに進入する狸や猿や野良猫などの野生動物は全て害獣とみなされ
ハンター等の狩猟の対象になり、農業生産者とハンターの敵は同じです。
 
野生動物と人間の共存の難しさを痛感いたしますが、シートンの作品から
は過酷な自然に生きる野性動物たちの喜びや悲しみへの深いまなざしが
感じさせられ、野生動物と人間が共存する知恵とは、人間が自然を破壊
し搾取するのではなく、大切にして守っていく事だと深く考えさせられました。
 
ErnestT.Seton
画像は「青春と読書」2008年8月号の中綴じページより。
文庫版「シートン動物記・愛犬ビンゴ」藤原英司・訳は集英社刊420円+税
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aoifujimoto について

1947年石川県金沢市生れ。69年平凡パンチ誌で8Pのイラストレーション作品掲載。73年芸術生活社の月刊芸術生活誌目次絵12点連載。75年に澁澤龍彦著東西不思議物語毎日新聞イラスト連載。87年集英社文庫カバー血の本シリーズイラスト連載。97年画文集怪物伝説白夜書房刊。02年富里市制記念親子馬の銅像デザイン制作。10年富里市案内板と27回トミサトスイカロードレースTシャツのイラストデザイン制作。個展13回。
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