騎虎!

普段のイラストレーターとしてのイラストやデザインの仕事ではパソコンの
デジタル表現で制作しています。依頼主の変更要望にすぐ対応でき、描き
直しや修正が簡単にできる事などから便利だからです。もはや、画材店の
商品は全て無用だと錯覚してしまいそうですが、そのようにはならないと思
っています。それは、画家としてアートの仕事になると従来からのキャンバ
スに絵の具でのアナログ表現にこだわる私のような人もいるからなのです。
 
さらに、デジタルは全て複製(プリント)作品であり、元データはあるものの
物質としての原画その物が無く、原画の画肌、絵の具の盛り上がり等の
テクスチュアや塗り方タッチやコラージュ(金箔貼り等)によるマチエール
(質感)も表現できないからです。例えば、日本を代表する著名なイラストレ
ーターの宇野亜喜良さんの絵画は軽妙洒脱な左利きの描線もさることなが
ら、盛り上げた地塗りや絵の具のタッチなどのマチエール表現に手描き(ア
ナログ)特有の味わいがあり、その点でも私はアナログに魅了されている。
 
テレビ番組「開運鑑定団」でも掛け軸などの絵が肉筆でなくて印刷された
複製である場合は、どんなに有名大家の絵でも希少価値ある本物としての
アートでは無くてコピーとしてみなされる。そのような事から、版画等はそれ
なりの価値を認識していますが、表現技術と制作時間と作品保管や費用も
デジタルに比べかかるがアナログでアート制作を続けたいと願っています。
 
8年前にF80号の龍絵「新生紀」という大作を描いたのですが、その拙作
を個展でご覧になった現在85才のFさんからこの絵を観ると生きる意欲が
湧いてくるとの感想をいただきました。勿論、私にとっては賛辞なのですが、
その時に四神で東の青龍に対する西の白虎も同じサイズで描こうという新
たな発想があり、その後も虎絵の制作構想を温め励みになっていました。
 
そして、最近「騎虎」という画題の絵を描いた。当初想定の大きなサイズが
合う虎絵だと思うが、残念ながら運送や保存などの取扱いが大変なので
手頃なF8号サイズに変更した。私は龍や猫の絵はよく描くのですが、同じ
猫族でも可愛くない?虎の絵も是非とも挑戦したいと念願していたのです。
龍虎は昔からある画題なので珍しく無いだけに、その表現が難しく、今後も
私の興味を惹く、対極のシンボル・イメージとして制作していきたいと思う。
 
イラストレーターとしての仕事は依頼主が要望するイメージの絵を描くよう
にすれば良いのですが、依頼されないアートの仕事では自分のイメージだ
けの世界なので自由ですが、時間をかけて迷いながらの葛藤が影響して
コロコロ変わるココロが熟成し作品が生まれるまで待つ必要があるのです。
 
説明が難しく誤解されると困るのですが、芸術そのものが一種の宗教の様
であって、画家はその教祖であり、作品に共感する人は信者のように思う。
作家は固定観念に囚われず心が自由で既成概念を破らなければならない。
 
しかし、恥ずかしい事に、私はそのような強い精神力も無く怠惰で気分が
落ち込みやすく脆いタイプで、生きるためには自分の軟弱な魂にやめられ
ない創作の激しい勢いを呼び覚ます必要があるのです。そのためにアート
制作をして生きるためのモチベーションを維持しているのだと自覚している。
 
この虎絵を描いている時に側で見ていた7才の孫が「絵は虎で無いね」と
少し不満そうな顔で言った。私は「そうだよ。虎ではなく、虎の様な心を描い
ているのだよ」と我が意を得たりと思ったが、黄色に黒縞の虎でないから
困惑したらしい。孫の見方は感覚的には正解で、虎を描いているのでは
無く、虎のように猛々しい勢いに乗る自分の魂を願って描いたのですから。
 
その意図から「騎虎」と画題を付けました。勿論、絵を観る人の魂に生きる
意欲が喚起できればアート作品を制作した画家冥利につきるのですが・・・
更に、密かに虎の頭の縞模様に別のイメージも描き込み祈願しています。
欲望は生きるために絶対に不可欠だと思うからで、人は無欲では生きられ
ない。でも、欲が強すぎる結果は犯罪となり、身を滅ぼす事は言うまでもあ
りません。絵は一見ノーマルではないが、心はホドホドがよろしいようです。
 
kiko
Copyright (C)2008AoiFujimoto. All rights reserved.
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aoifujimoto について

1947年石川県金沢市生れ。69年平凡パンチ誌で8Pのイラストレーション作品掲載。73年芸術生活社の月刊芸術生活誌目次絵12点連載。75年に澁澤龍彦著東西不思議物語毎日新聞イラスト連載。87年集英社文庫カバー血の本シリーズイラスト連載。97年画文集怪物伝説白夜書房刊。02年富里市制記念親子馬の銅像デザイン制作。10年富里市案内板と27回トミサトスイカロードレースTシャツのイラストデザイン制作。個展13回。
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