不二本蒼生 誕生!

1986年に現在の画号「不二本蒼生」に改名してから、私は生まれ変わったような気がしている。  現世に生きながら、輪廻転生しているようなものである。私は過去の愛憎を引きずっている本名で仕事をしたくなかったのだ。  自由業は別に本名でなくても、ペンネームや雅号などの筆名でも構わないのであり、雅号は古い徒弟制度では師匠が弟子に授けたりするが、封建的なことに反発する性分の私は、自分で勝手に付けて、「雅号」も「画号」とした。  自由業は不安定な不自由業でもあるが、私は様々な人達のお力添えと幸運でなんとかやってこれたと感謝している。ちなみにこの画号は、占いに凝っている彼女が姓名判断に基づいて決めた。

改名してから、1987年に集英社刊のホラー小説家、クライヴ・バーカー・著の「血の本」シリーズの全てのカバーイラストを描かせていただいた。  この仕事はかねてより集英社でお世話になっていた谷野徹也さんの推薦で、石塚正治さんから依頼され、私の怪奇的分野のエポックメーキングになったと思っている。

本のカバーイラストを描かせていただく場合、通常は本の内容原稿を渡されて、それを読んでからアイディアスケッチをして、イラストの下図を担当者へ送り検討していただき、了解されてから絵の具などでイラスト原画を描く。  しかし、今回は意外にも集英社の石塚さんから依頼された時に、本は読まなくてもいいからといわれた。制作する時間があまりないのだろうと私はその時に思ったが、石塚さんとスタジオギブの山岡茂さんがイラストのアイディアまでを決め、私がそれの下図を描き石塚さんに検討してもらいながら制作する方法だった。石塚さんは最初から、カバーのイメージを持っていたのである。

担当者がどのようなイメージで描いてもらいたいのかを、探るように何度も下図を描き、案が決定してから原画を制作した。  私の好みで描いているわけではなく、依頼主の要望で描いた作品である。それなので、クライヴ・バーカーの本は今もって全く読んでいない。  また、この仕事がきっかけとなったのか、白夜書房で出したホラー小説の巨匠、スティーヴン・キングの研究書「コンプリート・スティーヴン・キング」のカバーイラストも描かせていただいた。

私は子供の頃から、人魂とか幽霊などを見たこともなく、夜ひとりで部屋にこもって絵を描いたりしていたが、そんな時でも怖いとか不安感に襲われるようなことは全くなかった。霊感があるという彼女は、そんな私を鈍感だと笑う。  しかし、私の描く絵が怪奇的だとは、以前からいわれていたこともあり、なぜか順調に描けてしまう時には、もしかしたら怪しげな霊が私に取り憑いて手助けしてくれているのかもしれない、と感じることはあった。

学研パブリッシング(当時、学研)のオカルト雑誌『ムー』の「わたしのミステリー体験」のイラストも、長期にわたり連載で描かせていただいたが、 そんな霊感のない私が、よく描き続けられたものだと思う。  いつも締め切りと戦いながら描いていたのだが、原稿を読んでいると不思議なことに、脳裏に白い小さい光が現われ、それがモヤモヤと浮き上がって何かの形になり、やがてはっきりしたイメージとして見えてくる。それを鉛筆で描きとどめて、不思議と締め切りに間に合った。やはり背後霊でもいて、それが描かせてくれていたのだろうか。

子供の頃はお化け映画を観た記憶はなく、蝦蟇の妖術を使う児雷也の忍術映画とか、東宝の怪獣映画「ゴジラ」を観たことは憶えている。ゴジラが高圧電線に触れ、放電した火花がゴジラの皮膚に映えるシーンを観て、キレイだなと感激する変な部分を楽しむ子供だった。  最近になってDVDを楽しむようになったが、ホラー映画においては平凡な嗜好で、スプラッターやゾンビのような映画は好きでなく、「ゴーストバスターズ」や「ホーンテッドマンション」みたいに、子供が観ても楽しめるホラーコメディーが好きだ。

「血の本」シリーズの原画や、その他のホラー、ファンタジー系の絵を展示するため、翌年の1988年に美術評論家の日向あき子さんの推薦により、銀座ギャルリー・ヴィヴァンにて第7回の個展 不二本蒼生 展を開催していただいた。  私は、初日と搬出日以外は個展会場にいることはなく、新しく改名したばかりの個展だったのに、当時のサイン帳を見ると、私の古い友人・知人も来ていただいたことを知り、今改めて感動し感謝している。以下、その時の感謝を込めて、記帳より一部抜粋する。

イラストレーターの宇野亜喜良さん 山口ひとみさん 空山基さん 小幡堅さん 安久津和己さん 小妻要さん 堂昌一さん 西村春海さん 小悪征夫さん レオ澤鬼さん 沢登みよじさん 高氏雅昭さん 山口マサルさん 藤田新策さん 浅賀行雄さん 河原淳さん 杉本一文さん 下谷二助さん 小松桂士朗さん 北見隆さん 三嶋典東さん 畑農照雄さん 画家の大島哲以さん 久里洋二さん 日影眩さん 荒田秀也さん 池田龍雄さん 本田豊國さん 多賀新さん 上村次敏さん 田名網敬一さん 双葉社の北原清さん 講談社の今井邦一さん 白川充さん 鈴木貞史さん 白夜書房の森下信太郎さん 西尾武さん 斎藤礼子さん サン出版の百瀬諒一さん 野原豊さん 版画家の木寺啓幸さん 学研の宮原弘毅さん 安藤和有さん KFSの風間孝一さん 林清人さん 集英社の熊谷英一さん 篠勇さん 石塚正治さん 谷野徹也さん 阿佐ヶ谷美術学園の三輪孝光さん 陶芸家の美崎光邦さん スタヂオ・ユニの浅川演彦さん 田中于雄さん 親友の藤井薫さん 徳間書店の今井鎮夫さん 松岡妙子さん 眞矢正弘さん 光文社の丑山佐千男さん 玄光社の切明浩志さん 柴田忠男さん 短説の芦原修二さん 角川書店の藤原剛さん 新書館の白石征さん コレクターの福富太郎さん 林滋さん 橘謙造さん パルコの川本兼次さん フリージャーナリストの太田克彦さん 辰巳出版の古内幸夫さん 朝日ソノラマの石井進さん マガジンハウスの及川哲也さん 作家の志茂田景樹さん 仏文学者の竹内健さん 占星術のエトワール舟黎さん アイデア編集部の浜田忠士さん 画商の橋口光枝さん 今栄和作さん 詩人の安宅夏夫さん カメラマンの木村允彦さん 神奈川県立図書館司書の大内順さん 元テレビ東京プロデューサーの黒沼昭久さん 美術評論家の日向あき子さん 生尾慶太郎さん     この個展会場で私は初めて林滋さんにお会いし、私の絵のコレクターだったと林さんご自身から告げられた。

また、挿絵の仕事でお世話になっている小説家の志茂田景樹さんがその時の私の個展に占星術師のエトワール舟黎さんを伴って来られ、エトワールさんを紹介された。    エトワールさんは元国際線スチュワーデスだったそうで、占星術を研究されて独特の守護占星術を確立され、現在はヒーリングでも活躍されていて、私の猫を遠隔ヒーリングしていただいたりして大変お世話になっている。  1990年ナツメ社発行の「タロット占い」の本文と24枚のカードイラストレーションと箱絵に、エトワールさんの肖像など描かせていただいた。

そのエトワールさんのパーティー会場で、嘉祥流観相学会の藤木相元さんをエトワールさんから紹介された。  藤木さんは60年以上にわたって人々の運勢を鑑定し、嘉祥流観相学会を創立し、奈良時代から続く仏教宗派の一つ三輪宗の大僧正としても活躍され、お昼の人気番組「笑っていいとも!」などに登場して一躍大人気となった。  達磨大師の観相術の観点から「脳と相と運の因果論」を唱えて、サイエンスとしての「脳相学」を発表された。  私は、1994年こーりん社発行の「人生は顔だ!」などの占い本や、製品開発に関するイラストレーションとデザインの仕事を色々させていただいた。

そしてこの年、集英社の石塚さんの奥さんが喘息の発作を起こして亡くなられ、飼えなくなったアメリカンコッカースパニエルのドロシーちゃんを世田谷の玉川動物病院にて譲りうけ、私の家族になった。

個展の翌年には、銀座セントラル絵画館の「河鍋暁斎・百鬼夜展」で河鍋暁斎のコレクターである福富太郎さんの推薦により、私の「血の本」シリーズの イラストレーション原画も招待出品された。  また、私が出版界に登場するきっかけを作ってくれた『平凡パンチ』の感慨深い最終号『NEWパンチザウルス』(マガジンハウス刊)の表紙イラストレーションを描かせていただき、雑誌の死を弔った。

1992年に林滋さん(画家の林武さんのご子息)の経営する銀座・彩林堂画廊のグループ展「幻視彩展」に林さんから招待され出品した。  これは青森県弘前市のホテルや東京のコンビニエンスストアを色々と経営された林さんが絵画蒐集していて、その画家四人の渡辺満さん、数又紘一さん、永野一久さん、不二本蒼生の作品を「終末の預言者たち」と副題をつけた幻想的絵画の展覧会で、私は掛け時計の文字盤や機械などを取り去り、それを額として中に私の絵を嵌め込んだ作品「TALISMANIC FLOWER」など5点を出品した。

それから、「血の本」シリーズのカバーを見てくれていた、漫画家でサイエンス・エンターティナーの飛鳥昭雄さんの「ハイパー・サイエンス」シリーズ(講談社刊)の表紙イラストレーションを連作させてもらった。

それにしても、富里に引っ越してから、占星術師や観相学の大家と知り合いになったり、不思議と占いやオカルト、ホラーやファンタジーに関連する仕事が増えたような気がしている。

(つづく)

集英社刊クライヴ・バーカー著「血の本シリーズ」カバーイラストレーション

1987

1987,Copyright(C)2013 AoiFujimoto.

連載の回想記に「イラストレーションとアートの相克」と 「画材の変遷について」と「請求書」と 「仕事の入り方、進め方、納品まで」と 「エッセイ」や様々な絵と写真などを追加して 電子書籍化されました。お読みいただければ幸いです。

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aoifujimoto について

1947年石川県金沢市生れ。69年平凡パンチ誌で8Pのイラストレーション作品掲載。73年芸術生活社の月刊芸術生活誌目次絵12点連載。75年に澁澤龍彦著東西不思議物語毎日新聞イラスト連載。87年集英社文庫カバー血の本シリーズイラスト連載。97年画文集怪物伝説白夜書房刊。02年富里市制記念親子馬の銅像デザイン制作。10年富里市案内板と27回トミサトスイカロードレースTシャツのイラストデザイン制作。個展13回。
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